ロワール渓谷は、フランスのロワール川流域に広がる渓谷。
アンボワーズ、アンジェ、ブロワ、オルレアン、トゥールといった歴史上の重要都市が点在し、
また何よりも数々の名城が現存していることから「フランスの庭園」とも呼ばれ、
フランス繁栄の時代をリードしてきました。
かつての宮廷が多く置かれ、典雅なフランス語が発達したことから「フランス語の揺籃地」とも呼ばれる。
2000年にメーヌ川からシュリー=シュル=ロワールまでの渓谷の主要部分が世界遺産に登録された。
これに伴い、1981年に世界遺産に単独で登録されていたシャンボール城は一緒にされた。
また、フランス中央部に位置し、川があることで船による交通手段が確保できたことで、
中世には塩やワインなどの貿易の主要地域になりました。
ロワール渓谷はルネサンス芸術繁栄の中心だった
ロワール川流域は、15世紀から16世紀にかけてイタリアから伝来した
ルネサンス芸術繁栄の中心地域でもあります。
この地域は、現フランスの首都・パリのある地域よりもはるかに温暖で過ごしやすく、
古くからフランス王家や貴族たちの生活の場所として愛されてきました。
なのでロワール渓谷にある古城は、城砦としてではなく、居城として建設されることが多かった。
中世のロワール渓谷では、ルネサンス芸術の要素をふんだんに取り入れた建築様式で、
多くの美しい建物が生まれました。
ロワール渓谷はルネサンス建築の最高峰
ルネサンス様式の建築において最も重視されたことは、
全てのものがバランス良く調和することです。
それは、単に建築物の外観の美しさを模索するだけでなく、
いかにその建物が周りの自然環境と調和するか、ということです。
ロワール渓谷にある古城も、それぞれが美しい庭園や湖を持ち、城の建物と調和しています。
そのような理由からロワール渓谷は、城と庭園や自然が織り成す調和の美が見られ、
「フランスの庭園」と呼ばれるようになりました。
ロワール渓谷最大の城、シャンボール城
ロワール渓谷の古城の中に、「シャンボール城」という、
ロワール渓谷最大の城があります。
ここは1981年に、「シャンボールの城と領地」という名称で、単独で世界遺産に登録されたあと、
2000年に「シュリー・シュル・ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」になりました。
シャンボール城の敷地総面積は5500ha、建物の規模は、幅156m、奥行き117mにもなり、
その規模と壮大な光景は、あの「ヴェルサイユ宮殿」に匹敵するとも言われています。
フランソワ1世がダ・ヴィンチの発想を取り入れ、
狩猟のために造らせたのがシャンボール城でした。
シャンポール城は、フランソワ1世によって、以前からあった狩猟館を改築して造られましたが、
その時にルネサンス風に改修し、後に「ルネサンス様式の珠玉」と呼ばれるようになりました。
その異名からも想像できるように、シャンボール城は、壮大な規模を誇るだけでなく、
フランスにおけるルネサンス建築の最高峰として、人々を魅了しています。
ロワール渓谷の代表的な城、アンボワーズ城
「シャンボール城」に負けない知名度を誇るロワール渓谷の代表的な城が、アンボワーズ城です。
アンボワーズ城は、1492年に、シャルル8世の命令で既存の要塞を改築してできた城です。
この改築作業で、シャルル8世は、イタリアから多くの職人をフランスに招き入れました。
イタリアのルネサンス期に活躍した彫刻家、建築家、造園家などがアンボワーズ城敷地内に招聘され、
ここにはフランスで初めて、イタリア式のレイアウトが採用されました。
フランソワ1世の時代に王家の居城となったアンボワーズ城には、
王の招きでイタリアのルネサンス期を代表する芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが滞在。
これが後に、「フランス式庭園」の基礎となります。
幾何学的に整然と整備された庭園を持つアンボワーズ城は、
「ルネサンス期の傑作」とも言われ、フランスが誇る
ルネサンス建築の一つとして輝きを放っています。
アンボワーズ城にはレオナルド・ダ・ヴィンチの墓があります。
「眠りの森の美女」の舞台、ロワール渓谷のユッセ城
「眠りの森の美女」の舞台になったユッセ城は、
もともと要塞として11世紀に築かれたもので、
15世紀、シャルル7世の重臣であり、百年戦争で活躍したピュイエ伯が要塞を改築し、
その後住居棟が増築されました。
ロワール渓谷のアゼ・ル・リドー城
ロワール渓谷の数ある古城の中でも、最も美しく、高い人気を誇っているのがアゼ・ル・リドー城です。
ロワール川の支流アンドル川のほとりに建つアゼ・ル・リドー城は、
城館としては小さいながらも、フランス・ルネッサンス様式を持つ美しい城です。
ロワール渓谷のシュヴェルニー城
シュヴェルニー城は、狩猟場として有名なソローニュの森のはずれにあり、
近くにはシャンボール城やブロワ城もあります。
左右対称の美しい外観を持つシュヴェルニー城は、ブーレ石という年月を重ねるごとに
白さが増すという石材が使われており、現在もその美しさを保持し続けています。
ロワール渓谷のクロ・リュセ城
クロ・リュセ城は、レオナルド・ダ・ヴィンチが生涯最後の3年間を過ごした城として有名。
別名「クルーの館」とも呼ばれるクロ・リュセ城は、アンボワーズ城のそばに建っています。
現在、クロ・リュセ城は「レオナルド・ダ・ヴィンチパーク」になっています。
ロワール渓谷のシュノンソー城
ロワール河の支流シェール川に優美な姿を浮かべるシュノンソー城は、
アンリ2世が愛妾に与え、その後、女性が城主として何代も君臨した謂れを持っています。
水辺に佇む白い城館が、羽を休める白鳥に例えられるほど美しく、
独特な造りからヴェルサイユ宮殿に次ぐ人気の城となっています。
ロワール渓谷のシノン城
シノン城は百年戦争最中の1492年、
シャルル7世がジャンヌ・ダルクと会見した歴史の舞台です。
シノン城=ジャンヌ・ダルクと言えるほど、
ジャンヌ・ダルクに溢れた城となっています。
ロワール渓谷のブロワ城
歴代の王が居城とし、ジャンヌ・ダルクゆかりの城でもあるブロワ城は、
ゴシック、ルネサンス、バロックなど各時代の建築様式が混在し、
さながらフランスの城館の建築史です。
1429年にジャンヌが、イギリスへ向け軍を出発させる前に、
フランス大司教から祝福を受けたのが、このブロワ城でした。
ロワール渓谷に点在するお城の歴史
300をこえるロワールの古城のうち初期のものは、当初は中世に城砦として建造された。
ルネサンス期のフランソワ1世の頃から政治の中心はパリに移されたものの、
ロワール渓谷はなおも王族とかかわりが深かった。
ルイ14世の頃から政治・文化の中心はパリのヴェルサイユ宮殿へと移りますが、
その後も改修などは継続され、主要な城は廃れることはなかった。
しかし、フランス革命期には多くの城が破壊され盗難にも見舞われた。
ロワール渓谷の自然公園も見どころ
「シュリー・シュル・ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」には、
多くの美しい古城だけでなく、「ロワール・アンジュー・トゥレーヌ地方自然公園」という
ロワール渓谷最大の美しい自然公園があります。
ここでは、その自然美をカヤックやカヌーで楽しむことができます。
そのほか、火災で消失した跡地にできた「ヴァルメール城跡の公園」、
ユリ、バラなどが季節ごとに見事な鮮やかさと美しさを放つ「シャトニエール公園」など、
ロワール地方の大自然の美しさを体感することができます。
ロワール渓谷ではサイクリングでの観光もおすすめ
ロワール渓谷では、サイクリングコースが整備されています。
ロワールの古城巡りを、サイクリングをしながら楽しむこともできるのです。
気球や船で観光することも可能で色んな楽しみ方があります。
「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」は、
一度の旅行ではその全てを見ることができないほど壮大な世界遺産で、
フランスの歴史、自然、美の全てが詰まっています。
ロワール渓谷にある主要な城一覧
・アンボワーズ城
・アンジェ城
・アゼ=ル=リドー城
・ブロワ城
・ラ・ブルデジエール城
・シャンボール城
・ショーモン城
・シュノンソー城
・シャトーダン城
・シュヴェルニー城
・ランジェ城
・ロシュ城
・メナール城
・モンソロー城
・プレシ=ブレ城
・ル・リヴォー城
・ソーミュール城
・シュリー=シュル=ロワール城
・タルシー城
・トルセー城
・ユッセ城
・ヴァランセー城
・ヴィランドリー城